男統による皇位継承へ舵を切れ!
危険きはまる女性宮家創設論
(中)
森田忠明
つのる危機感
皇室の今後のあり方に関し、首相野田は、宮家問題を、
「皇室活動の安定性といふ意味から大変、緊急性の高い課題と認識」
する旨、強調した。意を受けた官房長官藤村も本年1月早早、女子皇族の婚姻後の皇籍離脱を定めた典範第12条に焦点をあて、新宮家創設をめぐつて、
「皇位継承の問題とは切り離して検討を行ふ」
と述べたものの、政府がこの期に言ひ出したには伏線がある。
それは、前侍従長渡邉允と、宮内庁長官羽毛田信吾の主張だ。前者が、皇位継承問題とは別の次元と繰り返しながら、皇室の御活動を十分に確保すべく女性宮家創設の急務を説いてゐたこと。
後者も、現行の皇室典範には皇位の安定的継承のうへで課題があると訴へたが、まづは新宮家論であるには相違なく、しかし「継承のうへで課題」といふ以上、女統への仕掛けであることいふを俟たぬ。
この羽毛田が、平成18年前後幾度か寬仁親王の男統継承維持論に接し、僭越にも、
「皇室の方方は発言を控へて頂くのが妥当」
と発言、悠仁親王の御誕生にも素直に慶賀の気持を表しなかつたのは記憶に新しからう。
君側の奸の跳梁かくのごとし、寥寥の思ひのみか、一層の危機感がつのる。
今や、明確に宮家立ち上げには言及しなかつた「報告書」骨子④(前出)が、より鮮明に姿を現はしてきた観は否めまい。
この2月末から月1、2回程度、有識者より意見聴取を行ひ、最終的に典範改正素案を策定するらしいが、藤村は、
「皇室制度に高い識見を有する」
との理由をあげ、担当の内閣官房参与に起用したのが、よりにもよつて園部とは、いかなる風の吹き回しであるか。
併せて、聴取対象を、
「皇室制度をはじめ憲法、宗教、歴史、文化、芸術など専門的知識を有する方や財界、労働界などの有識者」
と、何あらう専門家以外の分野からも意見を聴取するとした。こと皇室問題に多数決のていで容嘴する不遜は、深く含むところあつてのことと見立てねばならぬ。
かつて自民政府ですら、発見された極秘文書が語るごとく、初めに結論ありきの謀計をもつて粗雑かつ反逆的な典範改悪にいそしんだ。今また民主党である。同党が党としてまつたく祖国に重きを置かぬは、かの普天間基地の紛糾ひとつを見てしかり。
とはいへじつは、
──「日本国の象徴」にふさわしい開かれた皇室の実現へ、皇室典範を改正し、女性の皇位継承を可能とする。
16年参院選のマニフェストに、かやうな方針を記載してゐたのも民主党なのである。今回の懸案にはこの俗受けを拠り所に、なし崩し的に事を進めてゆくであらう策略の芬芬たる悪臭を嗅ぐ。
野田は野田で、せつかく中韓首脳と会談しながら、竹島で責めず尖閣で論難せずして痛痒も感ぜぬ手合ひである。すぐれて「緊急性の高い課題」たる皇室問題において、男統固守の伝統に則る姿勢をつらぬくには定見も洩れこず、やはに過ぎること推して知るべきものがある。
但し、野田は2月9日、
「皇室活動の安定性をどうするかといふ観点で、女性宮家の問題を有識者も含め議論する。皇位継承の問題ではない」
「古来、皇位継承が男系で続いてきた歴史的な重みを受けとめる」
と述べはした。これをしも男統継承を堅持する意向と推断しては本質が霞む。なほ安堵は禁物、彼は「皇室活動の安定性」を表看板として女性宮家創設には意欲を示しゐるのだ。
すなはち、一歩譲り野田個人の識見はいざ知らず、園部ごときが官房参与として意見聴取結果を集約するとあつては、推移は早くも瞭然。必ずや皇族女子の婚姻後も皇族を離れしめぬまま配偶者を皇族とし、その子孫にも皇位継承権を付与するに至らう。
証左は以下の発言にある。
第一は、「週刊朝日」昨年12月20日号。
「(内親王の)子が民間に留まるわけにはいかないから、歴史上はじめて皇統に属さない男子が皇室に入る。問題はどんな男性が入ってくるか。また、その子が天皇になるとしたら、男系皇統は終わる。女性宮家は将来の女系天皇につながる可能性があるのは明らか。たくさんの地雷原をさけながら、条文化し、着地できるかどうか。典範第十二条(前出)の効力を一時停止する時限立法を妥協で図るのも一案でしょう」
次に、「選択」本年1月号。
「皇室の存続こそが第一とするならば、…まずは新たな宮家を創設し、皇族を増やすことが先決ではないか。それこそが皇統を維持する上での大前提だ」
祖国との一体を庶幾する者は男統の永遠を祈る。園部、および園部亜流のめざすところはただひとつ、女統である。換言すれば純然たる皇統の廃絶である。一片の祖国愛も恋闕の心も持ち合せぬゆゑに、おのれらが企む「新しい歴史」なるものが実現したあかつき、却つて女統に似非の烙印を押し、女統そのものをも断絶に立ち至らしめるは必定。彼ら一類の素生はこれ以下でない。 (つづく)